布施剛臣建築設計事務所布施剛臣建築設計事務所

2025.03.15

地域の魅力を呼び覚ます

第3回東北建築大賞の第三次審査にノミネートされた山形の2作品の現地審査が本日行われ、3名の審査員の方々(北山恒・西方里見・六本木久志)と一緒に審査委員事務局として参加しました。

1つ目は村山市にある「リンクむらやま」

創立以来100年以上地域に親しまれてきた旧楯岡高校を利活用し、新たなにぎわいの創出と創造を目的としてオープンした複合施設です。
にぎわいを体現する場所として設けられた、11スパンが連続するこの施設のメイン空間「ワンルームリビング」は、とても明るく開放的で様々な交流が期待できる場所でした。

新しい施設を一通り案内してもらって印象的だったのは、20の民間事業と8つの公共サービスを建物内に上手にプログラムしながら建物自体の存在価値を呼び覚ましていたことと、各エリアを利用している人たちみんなが楽しそうでこの施設が賑わっているその光景でした。

2つ目は天童市にある「天童荘うなぎ勘次郎」

明治10年にうなぎ屋として創業した天童温泉の老舗旅館天童荘のうなぎ料理を、宿泊者だけでなく地域の人たちにも気軽に利用してもらおうとオープンしたお店です。

間口2間のリニアな飲食スペースでは食事を堪能しながら、両側にある大きな開口からは源泉櫓や田園、旅館天童荘や山並みなど、温泉街の風景を楽しむことができるつくりとなっていました。

この計画は建物単体だけに留まらず、無秩序な開発で失われた温泉街の景観に対して、同一設計者が設計を行なった天童荘ガーデンカフェ・源泉櫓などの一連の建築群から続くもので、歳月をかけて天童温泉の歴史や魅力を呼び覚まし、街並み全体に新たな風景を作り出している活動がよくわかりました。