布施剛臣建築設計事務所布施剛臣建築設計事務所

2023.03.16

庭を取り込んだ軒下空間

木架構による軒下空間のお茶処・休み処の事例の視察として、一条通りにある「虎屋菓寮京都一条店」を訪れました。
木の架構が美しい空間をなすお店として有名であるとともに、設計が内藤廣さんということで雑誌でも何度か拝見していて、以前から非常に興味のある建物でした。

室内の中心となる喫茶・休憩スペースは、奥にある既存の中庭と一条通りに面した前庭を結ぶ南北方向に向けての抜けを強く意識した透明かつ軽快な造りとなっていて、瓦屋根による重厚な外観との色濃いコントラストがとても印象的でした。

勾配屋根を架けることで生まれた室内の小屋裏には鉄骨造が隠れていて、天井の木ルーバーが意匠だけにとどまらず、この構造を補完する形で接合されていました。鉄骨と木が絶妙なバランスで補い合いながら、庭に向けての抜けや室内空間の柔らかさをつくり出している繊細でキレイなディテールに感動を覚えました。

外のテラス席となる軒下空間は庇を大きく張り出して軒先をできるだけ低く抑えることで、人を包み込むような空間となっていて、軒下に庭の空気感を目いっぱい引き込んだとても気持ちの良い場所となっていました。

この建物の配置計画・空間構成・ディテールを通して、昔から受け継がれてきた大切な庭に対する設計の強い意識・敬意がひしひしと感じられ、想像以上の貴重な体験をすることができました。