布施剛臣建築設計事務所布施剛臣建築設計事務所

2024.09.06

やまがた省エネ健康住宅Y-G3

現在工事が進行中の「谷地の住宅」はやまがた省エネ健康住宅の設計認証申請を行い、県の審査を経て断熱レベルの最上位にあたるY-G3(UA値0.23W/㎡K以下)の認定を受けています。

本日は村山総合支庁の検査員の方から断熱工事の中間検査を受け、現場の各所の施工状況が適正に行われているかを確認してもらいました。

当物件の断熱工事は熟練の専門業者を入れて気密シートの取合部のテープ張りなどの細部までを丁寧に施工してもらったこともあり、無事に検査合格の承認を受けることができました。

断熱性能を高めることとオープンなプランを組み合わせて当初から目指してきたものは、「軒による外との適度な距離感を保ちながら、雪国の寒い冬でも縮こまることなくのびやかで開放的に過ごせる山形ならではの住まいのあり方」です。

いろいろな立場の方々の施工やチェックによって、目指してきた住まいの実現に向けて一歩ずつ前に進んでいることを実感することができました。

2024.09.05

書をみて心洗われる

現在業務依頼をいただいている建主さんが講師を務める書道講座の作品展にお誘いをもらい、会場となる山形市上桜田の悠創の丘まで展覧会の鑑賞に行ってきました。

会場に入るとそれぞれの作品には、「文字としての形の美」や「筆や墨の使い方によって生まれる濃淡・潤渇・抑揚といった書独自の表現」・「筆を通した書き手の想い」などが表れていて、文字を越えた書という独特の芸術としての素晴らしさを味わうことができました。

書を鑑賞することにひたすら没頭しながら、次第に心が洗われていくような心地よいひとときを過ごすことができました。

2024.07.23

風土に根ざした木架構デザイン

「谷地の住宅」は木造の架構が組み上がり、建物のシルエットが緑豊かな田園風景の中に少しずつ浮かび上がってきました。

この住宅は河北の周辺環境や風土を踏まえ、各階に設けた勾配の異なる2枚の切妻屋根で2階建ての建物を各層で分割して全体のボリュームを抑えた構成としています。

これらの形の原型となるキレイな木架構を少し離れた場所から眺めながら、スケール感や集落とのバランスを確認することができました。

玄関ポーチの大屋根を支えている鉄骨の丸柱は、ポーチの先に続く庭先のプロムナードや田園風景への軽快な抜けをさらに引き出してくれています。

2階のアトリエスペース・吹抜け空間は屋根形状がそのまま反映された勾配天井として、南東面に広がるのどかな風景を眺めながらゆったりとできる場所となります。
登り梁の間に大入れ加工によって細かいピッチで落とし込まれた垂木の連なる姿にも満足しています。

2024.05.30

身近な保育施設に学ぶ

山形市のこども施設の建替えプロジェクトは3月から基本設計がスタートしています。
この段階で2日間に渡り、建主となる施設関係者の方々と他の保育施設の視察見学会を行いました。

ピックアップしたのは山形市木の実町にある「木の実保育園」と山形市小白川町にある「むつみ保育園」。
この2施設は前の会社で担当の上司の方や若手スタッフ数人と一緒になって力を合わせながら設計に携わった施設で、園児たちが元気に楽しく駆け回っている姿や建物との久しぶりの再会に個人的な喜びもありました。

二日間の視察において、現場を回りながら各施設の園長先生から直接説明をいただいた「保育園の保育方針や各所の使い勝手の感想」は、一つ一つが設計者・施設関係者の双方の心にとても響き、何にも替えがたい生きた設計教材でした。

保育の現場を見たことで、これまでの打合せだけでは踏み込めなかった新園舎へのイメージや図面へのリアリティがさらに生まれ、今後の設計に向けて実りの多い見学会となりました。

2024.05.21

水田に浮かぶ集落の風景

「谷地の住宅」はいよいよ工事がスタートしています。
今日は現場打合せや縄張り検査があり、夕方帰る際に偶然にも素晴らしい景色を見ることができました。

田植えを前に水張りを行っている建主さんの水田に、谷地の当該地区の夕焼けの風景がキレイに映し出されていたのです。
目の前に広がる景色・敷地を通り抜ける爽やかな風・水田に佇むカルガモ、感じるもの全てがとても心地好く、一人感動を覚えました。

思い返せば、昨年の七月に設計依頼を受けて敷地を見た時、この土地が持つ素晴らしい「場の力」や「敷地のポテンシャル」をさらに引き出せる建物にしたいと考え、その想いに沿って今ここに至っています。

夕暮れの景色に心洗われ、大切にしていた当初の想いに改めて触れることができ、一日の終わりに現場から素晴らしいお土産をもらってきました。

2024.04.26

谷地の住宅・地鎮祭

庭の木々が次々と芽吹き出した新緑の気持ちのいい天気の中、「谷地の住宅」の地鎮祭が無事に執り行われました。

新しい建物は北側とアプローチ路の脇に既存の中庭、南側に田園風景を眺める計画となります。

建主のご夫妻や施工を担当する高木の工事関係者の方々とともに、新しく建設する建物と解体する既存建物の四隅にお酒や塩をまいて清めながら、工事が安全に完成することを祈願しました。

また、工事に先駆けて建主さんが大切にしていたキャラやカキなどの樹木の一部の移植も無事完了しています。
幹が二股に分かれていたカキの木は、片方を剪定した上で根回しや枝切りを行いながら、内外緑化さんに丁寧に移植をしてもらいました。

無事に根付くか心配でしたが、カキの木の新芽が息吹く生き生きとした姿を見て、先祖から続くこの土地の想いや記憶を新たなかたちで紡げたことに大きな喜びを感じました。

2024.03.11

「生きる地層」と「根っこ」

「生きる地層」は、2022 年に創業150 周年を迎えた資生堂の一つの節目に、資生堂パーラーで展示されたウィンドウアート作品です。

この作品の切り抜きの一部を「谷地の住宅」の建主さんが譲り受けたことから、今回計画している住宅のメインとなるリビング・吹抜け空間の2層に連なる壁面に展示することを検討しています。

この作品は、「接状剥離」という造形保存技術を活用して実際に大地から剥ぎ取られた地層断面を布地にしたもので、直接見ると、積層した各地層の素材から生き生きとした躍動感が伝わってきます。

今回の住宅の建て替え計画では、先祖代々から脈々と積み重ねられてきた敷地内に色濃く残る中庭や樹木・田園風景を有機的に紡いで風土を引き継ぐことが一つのテーマであるため、「生きる地層」を展示することにも大きな意味があると感じています。

現地打合せの後には、最近度々訪れている河北町立中央図書館へ。
目的は、図書館入り口前に展示されている山形市の画家・須田武文さんの絵画作品「根っこ」。

「地層」と「根っこ」という大地の下層に存在するものとしての作品の共通点を感じながら、今回の展示の仕方の何かヒントを得られればと、いろいろな角度から改めて鑑賞しました。
ただ、トップライトから降り注ぐ光に照らされた作品から伝わる独特の陰影美や生命感あふれる表現の素晴らしさに、いつの間にか気持ちがいいほどに圧倒されるばかりでした。

2024.02.07

住宅街に陽だまりの園舎を

山形市の閑静な住宅街において、こども施設の建替えプロジェクトが新たにスタートしました。

昨年の12月から顔合わせ・既存建物見学・提案・打合せを行いながら、正式に設計監理の依頼をいただきました。

敷地は、店舗やクリニックなどの様々な建物が建ち並ぶ大通りから一本中に入った住宅地にあり、敷地の前面道路以外の3方向には隣地の建物が近い距離で軒を連ねています。

今回は、隣地建物に囲まれた住宅街の敷地の隙間から見える蔵王の山並みの風景を大切にしながら、コンパクトな園舎の中心に光を取り込み、こどもたちが集う「あたたかな陽だまりの場」をつくりたいと考えています。