2023.06.03
景観を室内に引き寄せる
雄大な自然に囲まれた温泉街のある山岳観光地において、3月から調査・改修計画をスタートした4棟のプロジェクトの設計が大詰めを迎えています。
調査を進めると各施設は山肌に寄り添いながらその場にふさわしい方角を向いて建っていて、敷地条件や高低差を有効に生かしてその場所ならではの豊かな景観を享受していることが改めてわかりました。
そこで、日常となっているこの素晴らしい景観を再認識しながら今回の宿泊滞在空間に引き寄せることを一つのテーマに掲げ、各施設のリデザイン・リブランディングにもつながる計画を進めてきました。
四季を通して多くの観光客が訪れるこの地において、豊かな自然環境を最大限に取り込みながら、次の世代に向けた魅力ある改修提案ができればと考えています。
2023.03.16
庭を取り込んだ軒下空間
木架構による軒下空間のお茶処・休み処の事例の視察として、一条通りにある「虎屋菓寮京都一条店」を訪れました。
木の架構が美しい空間をなすお店として有名であるとともに、設計が内藤廣さんということで雑誌でも何度か拝見していて、以前から非常に興味のある建物でした。
室内の中心となる喫茶・休憩スペースは、奥にある既存の中庭と一条通りに面した前庭を結ぶ南北方向に向けての抜けを強く意識した透明かつ軽快な造りとなっていて、瓦屋根による重厚な外観との色濃いコントラストがとても印象的でした。
勾配屋根を架けることで生まれた室内の小屋裏には鉄骨造が隠れていて、天井の木ルーバーが意匠だけにとどまらず、この構造を補完する形で接合されていました。鉄骨と木が絶妙なバランスで補い合いながら、庭に向けての抜けや室内空間の柔らかさをつくり出している繊細でキレイなディテールに感動を覚えました。
外のテラス席となる軒下空間は庇を大きく張り出して軒先をできるだけ低く抑えることで、人を包み込むような空間となっていて、軒下に庭の空気感を目いっぱい引き込んだとても気持ちの良い場所となっていました。
この建物の配置計画・空間構成・ディテールを通して、昔から受け継がれてきた大切な庭に対する設計の強い意識・敬意がひしひしと感じられ、想像以上の貴重な体験をすることができました。
2023.02.20
やまがた省エネ健康住宅
自治体の予算案が固まったことにより、県庁にて新年度の住宅関係の補助金に関する「令和5年度山形県支援制度説明会」が行われました。
主な内容は以下の通りです。
[やまがた省エネ健康住宅]
1.「やまがた健康住宅」から「やまがた省エネ健康住宅」への名称変更
2.基準値名称の変更 等級1(☆☆☆)→Y-G3、等級2(☆☆)→Y-G2、等級3(☆)→Y-G1
[断熱性能及び気密性能の基準値の変更はなし、HEAT20に合わせた等級名称の変更のみ]
3.補助額70万円
4.募集戸数200戸
[やまがた省エネ健康住宅+再エネ設備パッケージ]
1.やまがた健康住宅と併せて太陽光発電設備及び蓄電池設備・HEMSを設置する新築住宅に補助
2.補助額55~200万円
3.募集戸数50戸
弊社では「小白川の住宅」にて令和3年1月に「やまがた健康住宅」の等級2の認証をいただきました。
令和5年度の制度についても現在検討中の物件や今後の物件において積極的に補助金を取り入れながら、環境と家計にやさしい計画を引き続き進めていきたいと考えています。
2023.01.26
放射がもたらす快適な環境
放射冷暖房用ラジエータの製造開発を行っているピーエス株式会社の交流会にて、室内の冷暖房機器「PS HRシリーズ」や食品・ワインなどの貯蔵庫に設ける「PSカンティーナ」の概要や実例を平山社長から直接聞くことができました。
時代の流れやコストパフォーマンスの観点からACの送風による冷暖房が主流となっていますが、さらなる快適性を考えると、空気の温度だけではなくいかに放射(輻射)環境を整えるかが大切だと感じていました。
説明では、除湿型放射冷暖房「PS HR-C」がつくる放射と自然対流のシステムが、人をやさしく温めたり野菜やワインをやさしく冷やしてくれる快適な室内環境を可能にするとのことでした。冬は室温が低めでも周囲の床壁天井が冷たくなければ寒くは感じず、夏は室温が高めでも周りが冷えていれば心地よい冷涼感が得られるという原理です。
説明後にはソムリエの米野真理子さんがお薦めする極上のワインをご馳走になりながら、追い求めるより自然に近い快適な室内環境(縁側の陽だまりのようなぽかぽかした暖かさ、洞窟の中にいるようなひんやりとした涼しさ)の実現に向けて、コストバランスを調整しながら引き続き建て主さんに説明と提案を続けていこうと決意を新たにしました。
2023.01.01
謹賀新年
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年中は大変お世話になり、ありがとうございました。
住宅や各地で行なっているリノベーションの設計を通し、建物やそこに住まう人の営みに地面やまちとのつながりを保持することで、新たにできた建物が生き生きとした表情で山形の風土に根付くことを目指して日々取り組んでいます。
それでは本年もどうぞ宜しくお願い致します。
2022.10.26
ブルーボトルコーヒー
築100年を超える伝統的な町屋をカフェとしてリノベートした物件の視察として、南禅寺の参道沿いにある「ブルーボトルコーヒー京都カフェ」を訪れました。
重厚な柱や梁が整然と組まれた美しい骨組みや荒々しいながらも趣深く剥き出しになった土壁などの京町屋の風情溢れる空間を残しつつ、そこにブルーボトルコーヒーとしての新たな価値観を加え、二つが融合した独特の様式美や空間美が表現されたお店でした。
スキーマ建築計画社が提案する「接客される側と接客する側」や「内と外」のフラットな関係をつくるため、中庭に敷かれている砂利を屋外にとどめずに屋内にも広げるべく、屋外に使用されている砂利を取り込んだテラゾーを床やカウンター、ベンチなどに同一素材で使用することで、心地良い一体感が生み出されていました。
視察後には最寄りの南禅寺にある小堀遠州の作庭「方丈庭園」にも立ち寄ることができ、学びの多い一日となりました。
2022.10.14
四季のゆらぎを感じる住まい
2020年に竣工し東北では数少ないパッシブハウス認定を受けている、仙台市にある「上杉の家」を見学してきました。
この建物の設計者は、かつて山形の組織設計事務所で切磋琢磨させてもらい、現在は仙台を中心として大活躍されている菊池佳晴建築設計事務所の菊池さんです。
断熱性能による「居心地の良さ」と様々なアイディアによる「空間デザイン」の両立という設計テーマに沿って、菊池さんに説明を受けながら建物を回らせてもらいました。
この建物の冬の温熱環境としては、外気温が0℃前後になっても仙台は日射量が多いため、日射取得熱とUA値0.24の断熱性能、さらには環境建築への様々な取り組みによりほぼ無暖房で暖かく過ごせている、とのことでした。
自然の日射や風を取り込んで林の中にいるかのような庭の木々に四季のゆらぎを感じながら、細部までデザインされた空間で暮らす豊かな住まいの姿がとても印象的でした。
秋晴れの昼下がりに、見学を通して新たな刺激と心地良い時間をいただいてきました。
2022.10.08
風土に根ざした東北の未来
2022年度第43回東北建築賞の作品発表会がZoomミーティングによるオンラインで行われ、作品応募者の一人として昨年に続き今年も発表をさせてもらいました。
この賞は、建築と地域社会との交流の推進、建築関係者の研鑽、並びに東北地方の地域特性に立脚した建築作品の探求を目的に創設されたものです。
7分のプレゼンテーションと1分の質疑応答という発表形式のなか、応募総数31作品による熱気のある発表会となりました。その中で山形県内の建物も4作品ありました。
全国各地で活躍しているすばらしい設計者の方々や同じ山形で活躍されている設計者の方々の、建築にかける想いをオンライン越しに聞き取りながら、風土に根ざした東北の未来を築くために求められる建築の考え・デザイン・環境への取組み等について、様々な学びが得られた発表会となりました。