布施剛臣建築設計事務所布施剛臣建築設計事務所

2024.03.11

「生きる地層」と「根っこ」

「生きる地層」は、2022 年に創業150 周年を迎えた資生堂の一つの節目に、資生堂パーラーで展示されたウィンドウアート作品です。

この作品の切り抜きの一部を「谷地の住宅」の建主さんが譲り受けたことから、今回計画している住宅のメインとなるリビング・吹抜け空間の2層に連なる壁面に展示することを検討しています。

この作品は、「接状剥離」という造形保存技術を活用して実際に大地から剥ぎ取られた地層断面を布地にしたもので、直接見ると、積層した各地層の素材から生き生きとした躍動感が伝わってきます。

今回の住宅の建て替え計画では、先祖代々から脈々と積み重ねられてきた敷地内に色濃く残る中庭や樹木・田園風景を有機的に紡いで風土を引き継ぐことが一つのテーマであるため、「生きる地層」を展示することにも大きな意味があると感じています。

現地打合せの後には、最近度々訪れている河北町立中央図書館へ。
目的は、図書館入り口前に展示されている山形市の画家・須田武文さんの絵画作品「根っこ」。

「地層」と「根っこ」という大地の下層に存在するものとしての作品の共通点を感じながら、今回の展示の仕方の何かヒントを得られればと、いろいろな角度から改めて鑑賞しました。
ただ、トップライトから降り注ぐ光に照らされた作品から伝わる独特の陰影美や生命感あふれる表現の素晴らしさに、いつの間にか気持ちがいいほどに圧倒されるばかりでした。