布施剛臣建築設計事務所布施剛臣建築設計事務所

2026.08.27

現場の職人のエネルギー

山形市あこや町にある大風印刷旧ガッタハウスの建物を活用した、「アジェンダやまがた第二期改修工事」の施工がスタートしています。

今回のコンバージョンで新たに設ける「オープンキッチン」「音楽レッスン室」の間仕切りを中心として、各職人さんの手によってLGS工事・ボード工事・主要防火間仕切壁工事・造作木工事・防音工事が一気に行われています。

窓越しに見える千歳山を背景にして、職人さんたちの熱気がとても頼もしく映りました。

2026.08.03

みんなで支え合う地域の家

山形市あこや町にある大風印刷旧ガッタハウスの建物を活用した、「アジェンダやまがた第二期改修工事」の工事安全祈願祭を執り行いました。

今回のコンバージョンで新たに開設する事業は、不登校の児童がキッチンに集まり調理したパンやスイーツを地域の高齢者に配食することを通じて不登校児と独居高齢者をつなぎ支える、「新たな地域共生のための拠点」づくりです。

建物の名称は、CASA TUTTI(カーサ トゥッティ) ~みんなで集い、みんなで支える地域の家~

2階フロアの中心に、コーナーの壁が柔らかな曲面となった「オープンキッチン」を配置し、建具やガラス開口で各部屋とのつながりを高めているのが空間構成の特徴です。

「キッチン」「インクルーシブ」「地域」「既存建物の再生」という4つのテーマをつなぎ合わせぎながら、地域と共に歩む「もうひとつの家」のような場所を目指します。

この日は関係者が集まり、これから始まるコンバージョン工事の安全と新たな事業の成功を祈願しました。
11月の事業開始に向け、いよいよ工事がスタートします。

2026.06.13

土壁がもたらす街の空気感

「六日町のオフィス」の外壁左官工事が行われました。

今回の外壁には、街がまとう空気をこの建物へも映し出すべく、湯殿山神社をはじめとするこの地域の土をご協力のもと採取し、配合して混ぜ込んだ土塗り壁を採用しました。
地域が刻んできた記憶や景色をこの建物へ重ね、街の空気感をより豊かに醸成するとともに、文翔館の館内で息づく左官文化をここにも残していきたいと考えました。

初夏のやわらかな陽射しが街並みに差し込むなか、左官職人の原田さん親子が一鏝ごとに表情を確かめながら、丁寧に土壁を塗り重ねていってくれました。
土の粒子や鏝の跡が織りなす繊細な表情は、手仕事ならではの温かみや陰翳を感じさせてくれます。

街の風景を新たに映すこの土壁が街並みに自然と溶け込み、ひっそりと佇むこの場所らしい時間がまた改めて流れていってくれれば嬉しいです。

2026.06.04

街の流れに沿うように

「六日町のオフィス」のフローリング施工が行われました。

今回の改装では、街の空気感を室内へ緩やかに引き込めるよう、前面道路の流れや文翔館と湯殿山神社が並ぶこの地域の軸線に合わせて、フローリングの張り方向を計画しました。

床の張り方向は、そのわずかなニュアンスで空間の印象や街とのつながりも大きく変わってきます。

工事は、大きく開かれた入口開口部から街の風景が広がるなか、職人さんが一枚一枚フローリングの向きを意識しながら、丁寧に施工を進めてくれました。

こうした想いのこもった細やかな施工の積み重ねが、建築の居心地を形づくっていきます。この場所がこれまで積み重ねてきた記憶を受け継ぎながら、新たな時間を刻む場所へ。

少しずつ、その輪郭が見え始めています。

2026.05.16

木と長く暮らすために

2021年4月に竣工した「小白川町の住宅」は、隣の住宅が近接する西側の2階軒天の一部に、昨年秋頃より黴の付着が見られたため、当該箇所の補修に合わせて2階軒天全体と1階テラス軒天、正面外壁の木材保護塗装の塗り直しを行いました。

作業は、付着箇所を除去しつつ全体に清掃をかけ、防止補強下塗り材を施した上で、木材保護塗装を重ねる工程です。
当日は塗装職人さんのご指導のもと、建主さんと私も作業に参加しました。夏を感じさせる強い日差しの中、木の状態を確認しながら、経年変化した木肌に塗膜を重ねていきました。

外部の木材仕上げは、山形の気候風土の中で時間とともに表情や状態を変えていきます。
その変化を受け止めながら、木の建物に長く住み続けるため、適切に手を加えて維持していく手法を直接体験して学ぶ良い機会となりました。

2026.04.24

キッチンがつなぐ地域共生

山形市あこや町にある障がい児通所支援施設「アジェンダやまがた」では、利用登録者の増加や新規事業の立上げに対応するため、隣接する旧ガッタハウスを活用した第二期の改修設計が始動しています。

今回のコンバージョンで新たに開設を目指すのが、不登校児による高齢者向けケータリングサービス事業「つながるキッチン」です。
この事業では、不登校児がスタッフのもとで調理・配食・接客・運営に関わりながら社会性を育み、同時に地域の高齢者宅を訪問し、軽食のケータリングと傾聴サービスを通して孤立の解消を目指します。

本日の調理実演会では、キッチンメーカーの協力のもと、導入予定のスチームコンベクションオーブンなどを使用し、配食サービスを想定した調理検証を行いました。
クッキーやパンを中心に調理工程を実際に体験し、作業動線や衛生管理、オペレーションについて理解を深めることができました。

スチームコンベクションオーブンは、複数のメニューを同時に調理しながらも短時間で安定した焼き上がりを実現し、食材の風味やしっとりとした食感もしっかり保たれていました。限られた人員でも品質と効率を両立できる可能性を強く感じる機会となりました。

7月からはいよいよ改修工事がスタートし、10月の事業オープンに向けて、「つながるキッチン」は具体化の段階へと入ります。

この事業は、不登校児の社会復帰支援と独居高齢者の生活支援を融合させた、地域共生社会の実現を目指す新たな取り組みです。
不登校児が社会とつながり、高齢者が安心して暮らせる地域をつくるために、オープンまでに打合せやシミュレーションを重ねながら課題を一つひとつ乗り越えていきたいと考えています。

2026.04.09

街にひっそりと佇む場所

昨年から計画・打合せを重ねてきた「六日町のオフィス」の改装工事がまもなくスタートします。

文翔館の裏手にひっそりと佇むこの場所は、以前の「紙月書房」

ここは、2023年までの12年間、古本・カフェ・音楽に包まれながら誰もが自由に過ごせ、おおらかで独特の時間が流れる、街の中の特別な場所でした。

用途は変わっても、存在感のある丸太柱やカウンター上部の浮遊感のある付け鴨居など、想いの詰まった象徴的ディテールは残してあります。

少し手を加えながら「オフィス・ギャラリー」として再スタートするこの建物が、街にゆったりとした時間をまた刻んでいくことが今からとても楽しみです。

2026.03.29

風景と建築が重なる合う

関東の桜の開花に合わせ、以前から訪れたかった 「道の駅ましこ」を視察しました。

設計はマウントフジアーキテクツスタジオによるもので、「風景の建築」という考えのもと、周囲に広がる田園や山並みのかたちや質感を手がかりに、建築の形式や構成が丁寧に組み立てられていました。

内部は、木架構と土壁が空間を緩やかに分節し、屋根の位相差によって生まれるハイサイドライトからの自然光が差し込み、山並みと呼応するように連続的な空間体験を生み出していました。

風景を一つの媒介として建築が地域と深く結び直されていることがよくわかり、地域の公共建築のあり方の一つを体感できた貴重な視察となりました。