省エネ住宅でのびやかに暮らす

「谷地の住宅」は、建主さんが住み始めてから2シーズン目の冬を迎えています。
久しぶりにお宅を訪ね、薪ストーブの火にあたりながら、雪化粧した田園風景を眺めつつ、この住まいでの冬の暮らしについてゆっくりとお話を伺うことができました。
この住宅は、山形県が推進する「やまがた省エネ健康住宅(等級:Y-G3)」の断熱性能を備えています。
実際に暮らしてみて感じる快適性についてお聞きすると、薪ストーブがもたらす輻射による身体で感じるやわらかな暖かさと、壁面などに蓄えられた熱が逃げにくい高い断熱性能によって、一日を通してとても快適に過ごされているとのことでした。
空気を強く暖めるというより、空間全体が穏やかに温まっている感覚だといいます。
今回の訪問では、体感だけでなく数値的な検証も行いました。
温湿度計による温度分布データの確認と、表面放射温度計を用いてリビング空間の床・壁・天井の温度測定です。
温度分布のデータは、朝の冷え込みが厳しかった1月24日をピックアップしました。(下図参照)

薪ストーブのあるリビングでは、就寝前に暖房を止めたあとも朝まで暖かい室温を保ち、午前10時頃から薪を少しずつ足しながら夜まで快適に過ごされていました。
また、暖房のない玄関前の廊下でも、夜間の外気温が−7.1℃まで下がったときでも室温は14℃を下回ることがなく、一日を通して寒さをほとんど感じないとのことでした。
断熱性能の高さによって、家全体の温度差が小さく抑えられていることがうかがえます。
訪問当日のリビングの床壁天井の温度は、以下の結果でした。
・リビングの室温(一般部) 21.8℃
・リビング床の表面温度(一般部) 21.1℃
・リビング壁の表面温度(薪ストーブ正面) 23.6℃
・リビング壁の表面温度(一般部) 22.1℃
・リビング天井の表面温度(一般部) 22.7℃
室温と床・壁・天井の表面温度の差が小さいことが分かります。
人が感じる暖かさは空気温度だけではなく、周囲の表面温度の影響も大きく受けます。
この住まいでは、空間全体が穏やかに温められることで、身体にやさしい快適な暖かさが生まれていることが確認できました。

この住宅で目指したのは、断熱性能を高めることとオープンな空間構成を組み合わせながら、「風景と適度な距離感を保ちつつ、雪国の寒い冬でものびやかに暮らせる山形らしい住まい」をかたちにすることでした。
訪問の一週間ほど前、早朝のリビングから南に広がる雪景色の田んぼに、キジが姿を現したそうです。静かな朝の光のなかで、その姿をご夫婦で眺めていたというお話を聞かせていただきました。
雪に包まれた風景と、暖かな室内の時間。
その両方を穏やかにつなぐ場所として、この住まいが日々の暮らしに根づいていることを感じた冬の訪問となりました。